津地方裁判所 平成5年(わ)186号 判決 1993年12月24日
国籍
大韓民国
住居
三重県桑名市大字江場一五五二番地の一
会社役員
永川こと 李徳植
一九五〇年九月一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金二、五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、三重県桑名市大字江場一、五五二番地の一に居住し、同所において「近畿物産」の屋号で鋳物原料卸業を、同県四日市市諏訪栄町七番二九号所在のいとうビル四階において「サンサンクレジット四日市店」の屋号で貸金業を、同市川尻町川跨一、五八一番地において「サンクリスタル」の屋号でホテル業をそれぞれ営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 平成元年分の実際の総所得金額が六、〇一一万八、一九五円であり、これに対する所得税額が二、四五四万四、五〇〇円であるのに、売上の一部を除外する等の方法により所得の一部を秘匿した上、平成二年三月一五日、同県桑名市外堀二四番地所在の桑名税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、四四二万一、五六四円であり、これに対する所得税額が二五七万六、八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって右不正の行為により、正規の所得税額との差額二、一九六万七、七〇〇円を免れ
第二 平成二年分の実際の総所得金額が九、七五一万一、六〇五円であり、これに対する所得税額が四、三一八万七、五〇〇円であるのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成三年三月一五日、前記桑名税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、七二九万五、五六二円であり、これに対する所得税額が三六八万三、六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって右不正の行為により、正規の所得税額との差額三、九五〇万三、九〇〇円を免れ
第三 平成三年分の実際の総所得金額が八、七八七万八、七一六円であり、これに対する所得税額が三、八三〇万二、〇〇〇円であるのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、前記桑名税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、七八〇万一、〇三六円であり、これに対する所得税額が三八三万八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって右不正の行為により、正規の所得税額との差額三、四四七万一、二〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の目標)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
以上のほかは検察官請求証拠等関係カード甲番号5、7、8、10から22まで、24から26まで、30から32まで、36から38まで及び乙番号4から8まで、14、15記載の各証拠と同一であるから、証明すべき公訴事実の別の記載ともども、これらを引用する。
(法令の適用)
罰条 いずれも所得税法二三八条一・二項(懲役刑と罰金刑併料)
併合罪の処理 刑法四五条前段、更に懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(平成二年分の所得税法違反の罪に)、罰金刑につき同法四八条二項
労役場留置 同法一八条
懲役刑の執行猶予 同法二五条一項
(量刑の理由)
自己が経営する三部門の事実につき、それぞれの所得の一部を除外する方法で平成元年から平成三年までの三か年分の所得税合計九、五九四万二、八〇〇円をほ脱したもので、いずれの年のほ脱率も九〇パーセント前後で、刑事責任は軽視できない。しかし、犯行の動機は借入金を速やかに返済して事実経営を安定させようとしたもので、いたずらに蓄財資金の捻出を図ったものではないこと、犯行の態様も一部裏帳簿を作成したり、上様取引を行ったりして所得の隠匿を図った事業部門もあるが、つまみ食い的に所得を除外した事業部門もあり、冷静緻密な計画の下での所得隠しとまでは言えないこと、本件査察を契機に自己の行為を深く反省し、事業を個人経営から有限会社組織に変更し、コンピューターを導入し、税理士の指導を受けるなど資金財務管理の明確化を図ったこと、修正申告をして本税を納めるとともに、延滞税及び重加算税を完済したこと、その他前科、処罰歴が見当たらないことなどを考慮して刑の執行を猶予することとした。
よって、主文のとおり判決する。
(検察官磯部一、弁護人花井増實公判出席)
(裁判官 油田弘佑)